草モミジの北アルプス

 都会はまだ夏の暑さが残るが、山はそろそろ紅葉が始まる頃かなと気になってくる。北アルプスの高山はそろそろ紅葉が始まっているはずと、2003927日朝、大阪を立って飛騨高山に向かう。高山からバスに乗り、午後一時過ぎに新穂高に着く。すぐに、蒲田川右股沿いのブナやミズナラの森の中を歩く。ここを歩くのは、1974年冬、槍ヶ岳に登った時以来で、懐かしさがこみ上げてくる。谷を遡り、夕方、滝谷の避難小屋に着き、ここに泊まる。この谷は、井上靖の小説「氷壁」で、主人公魚津恭太が最後に登った谷である。

 翌朝、7時前に出発する。滝谷に出ると、頭上に北穂高岳ドームがのしかかる様に聳えているのが見える。雪渓から流れ出た谷の水は手を浸けていられない位冷たい。

  滝谷の出合・・頭上に北穂高岳ドームが見える

 次第に谷の流れは穏やかになり、白樺などの木々が黄色い森の中を歩き、ひょっこり、赤い屋根の小屋がある槍平に着く。ここで水を水筒に詰め、飛騨沢を登る。やがて、谷は大きく右に曲がり、沢の源頭が見渡せ、もう、槍ヶ岳の稜線が見える。真っ青な空の下、あたりの草原は一面黄色く紅葉している。その中を、谷を抜けると、目の前には槍ヶ岳が雄大に聳えているのが見える。

           槍ヶ岳と左に続く北鎌尾根の望む

 ここから槍ヶ岳を背に、両側になだらかな草原が続く谷を眺めながら、尾根道をのんびりと歩く。やがて、お昼頃、黄色い草原の中の双六池に着く。

               草モミジの双六池

ここから、左に笠ヶ岳へと向かう。しだいに疲れも増し、あたりは霧に覆われて視界がなくなってくる頃、秩父平に着く。広い気持ちの良い草原が続き、水も得られるので、今日はここに泊まることにする。夜、満天の星空となり、明日の晴天を約束している。

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