残雪の八ヶ岳
2004年4月24日早朝、茅野の朝は快晴である。美濃戸口行始発バスに乗る。乗客は僕一人である。町を抜け、郊外の畑に出ると、西にはまだ豊富な残雪を残し、ゴツゴツした岩肌の甲斐駒ヶ岳が朝日に輝きだす。終点でバスを降りる。空気が凛として冷たい。七時前、少し黄緑の新芽が出てきたカラマツの林の中を歩き始める。柳沢沿いの道に入る。モミの森の中は残雪が残り、谷には勢いよく雪解け水が流れている。シーズン前のせいか、今日は誰にも会わない。
柳沢沿いの森には残雪が多い
暗い森を抜け、開けた谷を歩き始めると、横岳や赤岳が見えてき、十時半頃、行者小屋に着く。今日は日帰りの予定であるので、最も近い阿弥陀岳を登って帰ることにする。
行者小屋の手前から見上げる赤岳
ひとり右手の雪渓に取り付く。雪は寒さで適当に締まっていて、楽に足場を作って登っていける。主稜線に登りつくと、雪の斜面はさらに急になり、アイゼンを着けて登る。
阿弥陀岳を望む
十二時少し前、阿弥陀岳に着く。風も無く、誰もいない静かな頂上である。厚い雲が広がってきた。天候は悪化し始めたようである。
阿弥陀岳の頂上にて
登ってきた尾根を下り、雪渓を急ぎ下る。森の道で登ってくる人たちとすれ違い、今日始めて言葉を交わす。大きな荷物を担いでいて、今日は上でキャンプのようだ。山裾の森を見上げると、もうすぐ芽吹きの季節が始まる予感がする。二時半頃、美濃戸口に着く。帰りのバスの車窓からは、新緑の森の中に満開の桜を眺めることができた。
もうすぐ芽吹きの八ヶ岳の森