「蓼科新道」の開拓 −200513

いずみ平の家から北八ヶ岳にでかけるには、県道191号線の終点の渋ノ湯までバスか車で行き、そこから登山道を登り始める。渋ノ湯からの登山道は、標高2496メートルの中山からいずみ平に向かうなだらかな尾根(西尾根と仮称する)の途中に向かって付けられている。また、この西尾根の末端は、いずみ平まで到達している。したがって、いずみ平から西尾根沿いに道を開くと、家から直接、歩いて北八ヶ岳に行ける様になる。二万五千分の一の地図では、いずみ平からに西尾根に踏み跡があるようになっているが、地元の林業の道で、余り、ハッキリしない。北八ッ日記その4に写真を載せた「八方台」は、この西尾根の中間辺りに位置している。八方台から黒百合平までは、夏道が西尾根沿いにある。したがって、いずみ平から八方台までの道を開拓すれば、家から北八ヶ岳への登山ルートができる。このルートを「蓼科新道」と名付けた。なんとか西尾根に道を開こうと考え、どこか適当な取り付き点がないか、1月後半から偵察をしていた。冬の時期、西尾根は、1−2メートルの雪に覆われ、藪が雪の下となっているため、とりあえず、雪のルートを開拓することにした。

 

 

                 ○明治湯

      県道191号線           ○渋辰野館

                      

                              ○渋ノ湯

いずみ平バス停        みさか池              登山道        ▲中山

 ○                    @クロカンコース             黒百合平

   ○我が家                             @        ○

                        ▲八方台

                 

     A

 

                                           天狗岳▲

 

         いずみ平から黒百合平に至る「蓼科新道」概念図

 

@八方台から黒百合平(一月二十二日、三月六日)

渋辰野館から八方台へは、クロスカントリスキーのコースになっている。辰野館に泊まった人がクロスカントリスキーで遊ぶコースになっている。一月二十二日、雪山の用のプラスチックブーツにスパッツを履いて、いずみ平から雪が残る191号線を歩いて、辰野館まで行く。ここから、八方台へは、スキーの跡があって、余り雪に潜らずに、登っていける。辰野館から三十分位で八方台に到達した。北八ッ日記その4に紹介したように八方台は、八ヶ岳から日本アルプスの展望台である。八方台から黒百合平へは、夏道があるが、冬には全く人が通らないようである。八方台からこの夏道にトレースを付けることにする。雪は、太ももまで潜り、なかなか捗らない。森は深く、夏道を見失いそうになる。しかし、所々、木に赤いテープが巻きつけてあるので、何とか夏の道を辿ることが出来る。しかし、渋ノ湯から登山道にでるあたりは、平坦な森になっていて、ルートがわからなくなる。強引に左に登山道に出ようとしてみる。しかし、森の木々に行く手を遮られる。やがて人が雪の上を歩いた跡にでる。喜んだのも束の間、なんとさっき自分の歩いた足跡だった。山の遭難でよくある「リングワンデリング」をやってしまった。別のルートを試してみるが、埒があかず、やむなく、登ってきた道を戻る。

 三月六日、高見石から天狗岳を登った帰り道、黒百合平からの下りに、上から八方台への道に入る。すぐに足跡はなくなり、雪は太ももまで潜る。やがて、一月に引き帰した所に出る。これから先は、所々、自分の歩いた跡がわずかに識別できる。しかし、先月以来の雪で深く潜る。予想外に時間がかかって八方台に着く。ここからAのコースに入るが、時間切れで、引き返す。クロカンコースを辰野館へ下る。

Aいずみ平から八方台(三月五日、六日)

 三月五日。西尾根の末端は、我が家の前に下りてきているが、ここは相当な急傾斜であるので、取り付きとしては、敬遠する。いずみ平の奥に歩いていって、谷が流れている所から歩き始める。谷の水がなくなる辺りで右手に急峻な小尾根が落ちていて、これを登り始める。腰あたりまで雪に埋るので、膝で一旦雪を固めてその跡を足で踏んでいく。やがて、広い尾根に出る。しかし、雪は柔らかく、なかなか捗らない。所々に、地元の財産区の赤い標識が打ってある。三時間位登った所で、八方台へ到達する計画をあきらめてもときた道を下る。

 三月六日、上から八方台へ下ってきた後、その勢いで上記の踏み跡とつなげようとして、上から下る。広い台地を太ももまで埋りながら歩く。だだっ広い尾根を下り始めるが、方向が定まらない。何とか下から付けた足跡にぶち当たらないかと進むが夕方となり、時間切れで引き返す。

 三月十三日、再度、いずみ平から八方台を目指す。気温も上がり、大分雪も融けてきて、歩きやすくなった。先週、歩いた踏み跡が残っていて、この上を歩く.最高到達点からはなるべく尾根の中心線に沿って登る。そのうち、先週、上から下って来て引き換えした地点に到達した。これで、ようやく、いずみ平から黒百合平への蓼科新道がつながった。

 三月二十日、山仲間のK君がいずみ平にやってきた。上からと下からとトレースした蓼科新道を一気に八方台まで歩くことにする。朝御飯を食べた後、足元をスパッツで固めて、西尾根に取り付く。三月に入り、すっかり気温も上がり、別荘地からの登りは、笹がでている。やがて、右に急な子尾根を登るところに出る。ここは、北側で雪が残り、先般の足跡が残っており、殆ど潜らずに登っていける。尾根の上に出ると、まだ雪が尾根を覆っている。雪の上の踏み跡をたどり、辰野館から来ている林道に出る。二時間ほどで八方台に着いた。少し雲が多いが八ヶ岳連峰が見渡せ、諏訪の盆地を隔てて、中央アルプス・南アルプスがくっきりと見える。しばらく休んだ後、もと来た道をたどって一時間程で家に戻る。

          西尾根の最初の急斜面を登った所の雪の台地